Weekend Note

2010年ブログ開設。日常、建築、旅行などについて書いています。

「女と男のいる舗道」

VIVRE SA VIE(1962)


日本で小さな画面で見たときは、暗い話だな、くらいにしか思わなかった。今回映画館で観てみると、あまりにも鮮烈だった。

なぜだろう。ストーリー展開など、退屈この上ないようなものだ。でもそんなこと、ここではどうでもいい。どの一瞬を切り取っても、写真の作品としても耐えうるような完璧さ。最初のアンナ・カリーナの暗い横顔のショットで場内が水をうったように静まりかえって、FINの三文字まで、傑作の写真を滑らかにつないでいったような感じだ。けれど、構図にばかり拘泥しているかというと、そうでもなさそうなのだから、ますますわからない。

作品中には、もう普段見慣れたはずのパリの風景も、過去の有名な映画のシーンも出てくるが、完全に作品全体のイメージの中に組み込まれている。俳優の表情も、街や自然の風景も、すべて妥協なく自らの映画に従属させてしまうようなゴダールの意志の強靭さは、大スクリーンでこそ最大限に発散されるのか。

このショックをどう消化したらいいものか、まだもてあましているが、これからもずっと映画を好きで観つづけていくのなら、ゴダールはまちがいなく何度も通る道。この興味を完全には切らさず持続していくのだと思う。