Weekend Note

2010年ブログ開設。日常、建築、旅行などについて書いています。

ALFRED HITCHCOCK 1

彼は、フランスの観客にこんなにも愛されているのか。
シネマテーク・フランセーズでこの1月から2月にかけて行われているアルフレッド・ヒッチコック特集の映画を観に行くたびに、いつも驚いてきた。

上映開始の数十分前から行列ができる。常に満席となり、映画が終わるとささやかながらも温かい拍手に包まれる。僕としては言葉の壁で疲れもするが、観終わるといつも心温まる気持ちになった。ひとつは映画の面白さのため、ひとつはこの雰囲気のため。


何本か見ていくうちに、建築家が作品や設計を文章で表現するためによく使うような言葉(たとえば構成、形式、部分と全体の関係、デザイン密度、など)で、無理なこじつけもなく、理解が深まり、より楽しめると強く思いはじめた。それどころか、これらのことを、ヒッチコックは、きわめて高い完成度で作品として実現させているように感じる。建築よりも建築っぽい。

簡単な例では、隈さんがメディア戦略として掲げる「負ける建築」と言う言葉。独創性を生むために、制約がなかったら制約を探しにいくと言っていたけれど、ヒッチコックも特にこの傾向が強い。「裏窓」や「ダイヤルMを廻せ!」では舞台を、「サイコ」ではカラーを、「鳥」では音楽をあえて封印して、その中でどう物語るか。
技巧的なことについては、トリュフォーヒッチコックに合計50時間におよぶインタビューをもとにまとめた『映画術』という本があるので、死ぬまでに読みたいなーと思っている。


Rear Window (1954)

もちろん、普通にファンとして楽しんだ面も多かった。今回観た中で何が好きかと聞かれたら、「裏窓」「ダイヤルMを廻せ!」「泥棒成金」と答えます。