Weekend Note

2010年ブログ開設。日常、建築、旅行などについて書いています。

もうひとつの旅(南仏、北イタリア旅行記 12)

やや気取ったタイトルだが、まあいいかあ。旅行は移動時間などの暇な時間もかなり多いので、その間にブログに書くことを考えたり、本を読んだりする。もうひとつの旅とは読書のこと。

何冊か読んだうち圧倒的に面白かったのが、200年前のイギリスの女流作家ジェーン・オースティンだった。以前に読んだ彼女の別の小説もだったが、今回もまた面白い。例によって舞台はイギリスの片田舎の、非常に狭い社会。小説中でもたいした事件すら起こらない。しかし人間性への鋭い皮肉やユーモアには、はっと身が引き締まる思いがする。オースティン自身も狭い社会で結婚もせず平凡な人生を送ったが、天才にとってはそれで十分だったらしい。世界が広いことより深いことのほうが大切なのだろう。


もし僕がオースティンの小説中の人物に加わって、今回の旅行の話でもさせられたらどうなるだろう。少しでも調子に乗った態度があったなら、筆に衣着せぬ彼女のことだ、こちらの身が引き締まるどころか凍りつくような辛辣な会話が、あとでなされるにちがいない。

「あの程度の話で自分を誇示できると思っているのかもしれないけれど、そんなことってあるのかしら。外国に行ったからといって、立居振舞いに落ち着きが出るでも、思いやりの心が育つでもないのね。」 
「私もきみに賛成だね。遊学だの旅行だのはせいぜい楽しんでくれればいいが、一方でそれは手段であって目的ではないことを、彼はもっと意識するべきだと思う。」