Weekend Note

2010年ブログ開設。日常、建築、旅行などについて書いています。

テート・モダン(イギリス旅行記 2)


テムズ河沿いに位置する、火力発電所をリノベーションした美術館。コンペで選ばれた設計者、スイスのヘルツォーク&ド・ムーロンは、北京五輪のスタジアム「鳥の巣」の建築家ユニットでもある。

タービンホールの大空間にいきなり圧倒される。無意味な大空間が―それができるのはとても難しいことだ―いかに気持ちのいい空間かを実感する。また、展示室やカフェやショップなどは、設計の配置計画と、入館料が無料なことによって、素敵な動線計画が実現されていた。

タービンホールのインスタレーションも良かった。中国人(?)アーティストの作品で、タイトルはSUNFLOWER SEEDS(ひまわりの種)。陶芸で作られ、着色された膨大な数のひまわりの種を床一面に敷き詰めているのだが、メイキングの映像を見ると、種の着色の作業を中国のとある田舎町の主婦たちに雇用対策のようにあてがっているようだ。インスタレーションがアーティスト個人のセンスの発露である以上に、プロジェクトを社会の中でどう位置づけて振舞うのかが、ここでは重要なのだった。

卒業論文で横浜の寿地区を調べているときにも感じたが、アーティストの人たちは、鋭い嗅覚で社会の裂け目のような場所を見つけ、入り込み、活動を起こす。その身軽さが武器なのだと思う。

翌日も夜9時頃にテート・モダンに行ってみた。すると、タービンホールでピアノのコンサートが行われている。あの大空間が見事に使いこなされている。ロンドン市民の人たちにとっては日常かもしれないが、自分は今素晴らしいものを見ているのではないかという瑞々しい気持ちになる。

ヨーロッパにいる間に、あと何度こうした場面に出会えるだろう…。