Weekend Note

2010年ブログ開設。日常、建築、旅行などについて書いています。

懐かしい街(イギリス旅行記 16)

建築学科に進学したばかりの大学二年生の冬学期、神田先生の講義で、先生がエディンバラにいたことがあると聞いた。そのとき「いいな、行ってみたいな」と思った覚えがある。あれから三年半が経ってこうして来られたのだから、ぼんやり思っていることは意外と実現するのかもしれない。

初めて来たのに、なぜか懐かしい。エディンバラを歩くと、ことごとく今まで訪れた、ある街のある場所の風景と重なる。日本も外国も関わらず。子供時代から現在までひっくるめて。パリのブールヴァールと見紛ってしばらく行くと、外濠の都会的開放感を想起するというように。

それらはたぶん、エディンバラのそれぞれの場所が、いわゆる「その場の質」を濃密に持っていて、記憶の深いところにある風景とまっすぐにつながるからだと思う。でも、エディンバラが既視感のある平凡な街だと言いたいのではない。…より正確を期すならば、結晶化した記憶の風景とまっすぐにつながると感じたから。

さらに言えば、これから将来暮らすであろうどこかの街の、愛着を持つであろう、また何かの想いを託せるであろう風景をも、エディンバラのどこかの風景が先取りしているのではないか、とも思えてくる。もちろんエディンバラに住めれば歓迎だ。冬は寒そうだが、それでも住みこなしてみたいと思える。

数日間ずっとそんなふうに、目の前の現実の風景と、記憶の風景や夢幻の風景のイメージが、二重三重に映し出されているのを見るかのような、不思議な体験をしている気分だった。一か月がたった今でも、その気分は勘違いではなかったと思われる。