Weekend Note

2010年ブログ開設。日常、建築、旅行などについて書いています。

ル・トロネとフォントネー



シトー会は、清貧、質素を厳格に守る修道生活を目指して中世に現れた修道会。日曜日にはパリから日帰りで、最古のシトー会修道院であるフォントネー修道院(1118年)を訪れた。

2月の南仏旅行のメインでもあったル・トロネ修道院もシトー会なので、装飾を廃した質素な建築、回廊を中心とした構成など共通点も多かった。それと同時に、自分にとっては訪れた日時による感じ方の違いも際立って面白かった。

冬の雨の日に訪れたル・トロネでは、「祈り、働く」という確固とした生活のかたちを建築が体現している、その力強さに圧倒された。一方の今回フォントネーを訪れたのは、初夏の快晴の日曜日。建築の空間構成ではル・トロネが凄かったが、天気に恵まれたフォントネーでは、窓からそそぐ光や、扉の開口によって切り取られた緑などの断片的なショットが、とても鮮明で美しかった。

この二つの体験の違いは、写真や映画の、白黒とカラーの違いに似ているように思う。直接的に現実に近いのはカラーかもしれないが、白黒は現実をきっかけとしつつも、それとは独立したイメージに変質し、昇華するもの。建築が時代を超えて心に迫ってくるオーラをより感じたのはル・トロネのほうだった。それは、しとしと降る雨が、色彩という、ノイズにもなりうる要素を遮断するフィルターの役割を果たして、より抽象的なことがらを感じやすかったからではないか。今振り返ってみてそう思う。

でも、フォントネーでの鮮やかな色彩も捨てがたい。雨と晴れのどちらがいいと言えることではないが、それぞれを訪れた日が逆だったら、どう感じていただろう。あまり条件に左右されずに本質を見つける目を持っていたいとは願うけれど、自分にはまだまだ難しいんだろうな。