Weekend Note

2010年ブログ開設。日常、建築、旅行などについて書いています。

アスプルンドの建築(スウェーデン、フィンランド旅行記 5)

「森の墓地」も、ストックホルム市立図書館も、視覚的な見た目の第一印象としては、これくらいのものだとは予想してたよ、と思った。しかし、一時間、二時間とその場所で過ごすにつれ、アスプルンドが込めたコンセプトや意図がじわり、じわりと感じられてくる。いくつもの小さな流れが集まってできる大河を見ているようなイメージか。

クラシカルであるとかモダンであるとか、箱型であるとか曲面であるとか、そういう表面上の分類を超えて、優れた建築にはそれを考えた人(たち)の哲学が体現されていること、それはひとつひとつのプロセスに真摯に取り組まれることによってのみ実現されることを、今までになかったほど強く感じた。そんな当たり前の、言うも恥ずかしい正論は、頭では分かっていたけれど、そのアタリマエノコトを自分は思い知りたかったのだと思う。

建築学科に入って何年か経って、知識も増え、できることも増え、卒論や卒制も一応くぐり抜けて、しかしいらぬプライドやコンプレックスも育ててきたかもしれない。フランスに来て10か月経って、留学という一仕事を終えたなどとレベルの低い達成感に浸ろうとしていたかもしれない。そんな今、手ごたえのある本物の建築と出会えたのは救いであった気がする。

建築でも人間性でも、またゼロから学びなおす気持ちになる必要がある気がする。今さら?ご冗談でしょう、アスプルンドさん、と言いたい気持ちだが、仕方ない。

またいつかスウェーデンに来て、今回行けなかったアスプルンドの建築も巡ろう。