Weekend Note

2010年ブログ開設。日常、建築、旅行などについて書いています。

アールトの傑作(スウェーデン、フィンランド旅行記 11)

ヘルシンキから北に移動し、フィンランド中部のユヴァスキュラという小さな町で2泊3日過ごした。町の周辺の地図では湖の入り組んだ水色が大きな面積を占めている。まさに森と湖の国フィンランドのイメージそのままの風景が延々と広がっている。

ユヴァスキュラの中心部からバスで20分ほど行くと、セイナッツァロという小さな島に着く。ここセイナッツァロのタウンホール(1949-52)は、アルヴァ・アールトの最高傑作のひとつと言われている建築。

事前に写真などで見ていた限りでは、何がそんなにすごいのか正直わからなかった。田舎の町だか村のしがない役場だとしか思っていなかったも同然だった。

しかし、実物には圧倒された。まず、中庭の周りに配置されたレンガの外観の建物群はどこから見ても端正なプロポーションを保っている。内部に入っても、中庭を囲む回廊、階段、講堂など、ほとんど完璧ではないかと思えるほどの空間が展開していく。夢中に何枚もスケッチを重ねた。


決して高価な材料ばかり使っているのではないが、レンガや木の素材のバランスが素晴らしい。外観からドアの取っ手に至るまで、ここまで次々に豊かな空間、優れた造型ができればさぞ楽しいだろう。もちろん、役場としての機能も敷地内の高低差を活かしたりして処理している。

様式的であるとか近代的であるとか、禁欲的であるとか装飾的であるといった括りを超越して、建築が物体の集積であるという真実をこの建築は体現していると感じた。そして自分のこれからの設計活動においてもたえず思考を刺激する源になるだろうと思っている。