Weekend Note

2010年ブログ開設。日常、建築、旅行などについて書いています。

コエ・タロ(アールトの夏の家)(スウェーデン、フィンランド旅行記 12)

セイナッツァロのタウンホールから5キロほど離れた場所に、アールトが夏期に過ごしていた「夏の家」、通称「コエ・タロ」がある。セイナッツァロからバスを利用できるが、天気が良く時間に余裕があったので、歩いて向かった。森と湖の風景を1時間ほど歩いただろうか。なにはともあれ、のどか。

セイナッツァロのタウンホールが建築作品としての傑作であるのに対して、「夏の家」は実験住宅と言われるだけあって、アールトが自分の家で様々な建築的試みを試しているのがよくわかる。特に外壁では50以上ものレンガのパターンの耐久性などを試していたらしく、さながらパッチワークのような、ちょっとおかしな雰囲気を醸し出している。

このおうちでも随所にセンスあふれるデザインを見せてくれてるのは流石アールトだが、他人に見せるためよりは自分の建築デザインの修練や息抜き(?)に夏の家を作っていたのだろう、という印象のほうが強く感じた。完成度を追求した小説というよりは、自然体な日記のようだ。家の敷地は湖に面していて、アールトはよくボートで湖に出かけていたのだとか。

「セイナッツァロのタウンホール」と「コエ・タロ」を訪れた一日は、建築家アールトと、ひとりの人間アールトの双方を垣間見ることができた気がする。そういえばル・コルビュジエアスプルンドも、魂のこもった名作建築をいくつも設計している一方で、自分の過ごす夏の家は水辺の近くに慎ましやかに作っている。こちらもいつか訪れる機会を楽しみにしている。