Weekend Note

2010年ブログ開設。日常、建築、旅行などについて書いています。

サン・ギエム・ル・デゼール(ラングドック旅行記 5)

「フランスの最も美しい村」Les plus beaux villages de Franceは、良質な遺産を多く持つ田舎の小さな村の観光を促進するため1982年に設立された協会で、人口2000人未満などの条件を満たした村々が2011年7月時点で156認定されているらしい。留学中も含めて今まで訪れた「美しい村」はいずれも到達困難な奥地にあったが、それだけに観光地化は抑えられていて文字通り美しかった。



ミディ運河も通る地中海近くの街アグドからエロー河を北に遡ること約50km。のどかな田舎の道路が徐々に峻厳な山地に入り込み、野性の峡谷に象嵌されたような小さな村、サン・ギエム・ル・デゼールにたどり着く。

ここも「美しい村」のひとつ。804年に修道院が建設され、中世はサンチャゴ・デ・コンポステーラへの巡礼道の休憩地、また小巡礼地として名声を博した。何と言ってもロケーションが魅力的、そして圧倒的。

細い谷筋に沿って線状に展開する集落は古き姿をよくとどめていて、小川の取り込み方や住居のオモテとウラの構成なども読み応えがある。小さいながらも凛とした佇まい。修道院は村の中心部にあり、心静まる静謐な場所だった。

尾根の上にも遺跡が。日の当たる急斜面にはオリーブの段々畑が見られる。自由時間、若い3人でまさに修道士のようにストイックに尾根の頂上まで登りつめると、自然の彫刻とも言うべき渓谷の地形が一望できた。美しい村の忘れがたき夕方。