Weekend Note

2010年ブログ開設。日常、建築、旅行などについて書いています。

ロンドンのふたつの傑作建築(イギリス、フランス旅行記 4)

スティーブン・ジェラードのゴールも見れて思い残すこと無くリヴァプールをあとにし、また数日間のロンドン滞在が始まった。建築関係の人たちも含めた日本人のパブの集まりにも参加させてもらい、フラットで好い加減に繋がる雰囲気は留学中を思い出して懐かしかった。

ロンドンで印象に残ったのは、テート・モダンとサー・ジョン・ソーン美術館のふたつの建築。ともに2年前の再訪だった。

テート・モダンは元々発電所だった建物を用途転用したモダンアートの美術館で、2年前はタービンホールの大空間で行われていた企画展が素晴らしかった。今回は何も催されていない時期だったので最初は肩すかしを食らった気分だったが、常設展をもう一度見て回ってみると、展示されているアート作品と建築のデザインの双方の質の高さをあらためて感じ、大満足だった。

特に建築については明快な構成や、テムズ河とセント・ポール大聖堂への眺望などへのさりげない気配りなどが秀逸。全体的に抑制の利いた良いデザインだとは思うのだが、何となくいい感じと思っているものを言語化しきれていないもどかしさもある。以前、リスボンのグルベンキアンについて
「旅行で少し訪れて強烈な印象が残るというよりは、日常的に図書館や公園を利用しているうち、ゆっくりと記憶に馴染んでいく。そんな場所なのだろうと感じる。」
と書いたことがあるが、テート・モダンも何度でも訪れたい場所だ。

ふたつめのサー・ジョン・ソーン美術館は、建築家ジョン・ソーンの自邸を美術館として公開しているものだ。大学院で昨年から始まった「近代建築理論研究会」で僕が調べる担当にジョン・ソーンも入っていたこともあり、もう一度行ってみたかった。こちらは2年前はソーンの収集した大量の美術品以外はそれほど印象深くもなかったが、今回も展示品に惑わされるわけにはいかない。採光へのこだわりや、折衷様式(?)などという言葉から逸脱してしまっているのではないかと思うほどのソーン個人のクリエイティビティに圧倒された。

今回テート・モダンとサー・ジョン・ソーン美術館から学んだことは、良い場所や建築は何度でも訪れて、それから受ける感銘をアップデートし続ける意識でいた方が良いということ。認識をあらためさせられることには不思議な快感がある。