Weekend Note

2010年ブログ開設。日常、建築、旅行などについて書いています。

ディプロマ(イギリス、フランス旅行記 12)

僕にとって3月は学生生活最後の休み期間だったが、パリで僕を泊めてくれた嶺文は建築学校でのディプロマ(修士設計)の最中だった。そこで学校のアトリエ(製図室)での作業風景も少し見ることができた。快適な作業環境だと感じる。因みに、僕らの通っていたラ・ヴィレットの建築学校と嶺文のベルヴィルは兄弟校のようなものと思ってもらえればいいかと思う。

日本の大学の学部の卒業設計や修士設計では学生がテーマの段階から決めるものが多いが、ベルヴィルで嶺文の選択したディプロマでは先生が敷地となる都市まで決めている。ディエップというフランス北部の港街で、まずはグループで都市をリサーチし、次に個人あるいは何人かで敷地を決めて建築の設計に取り組むというスケジュールになっている。日本では特に東日本大震災以降はプロセスプランニングだとかコミュニティデザインという言葉がある種のトレンドのようになっていて(もちろん重要な考えだとは思うけれど)、物としての建築を構想しないような傾向がある気がするので、フランスの、建築によって都市を変えられるんだと信じて疑わない気概は、一回りして新鮮にうつる。

提出は6月で、今はリサーチの段階だった。われらが嶺文は申し分無く優秀な学生たちのグループに入っているようだ。彼が言うなら間違いないだろう。特にブルガリア人のペターという学生については、彼のこれまでの課題での作品や彫刻を紹介したホームページ(フランスでは就職活動のために自分のホームページを作ることが多いらしい)を嶺文に見せてもらって衝撃を受けた。僕たちと同い年でここまでの力量を持った人はほとんど見たことがない。アトリエで挨拶程度の会話を交わしたときは物腰穏やかで普通の大人しい学生に見えたが、凄い人がいるもんだ。

日本では一級建築士の受験のためには大学院を出てからも実務経験が必要なのに対して、フランスでは修士をとれば建築家の資格がもらえる。つまりディプロマは自動的に国家試験だということになるわけで、だからこそ落とされる学生も多く、厳しいようだ。これからいよいよ佳境に入ってくる時期。パリはどんどん気持ちの良い季節になり、外に遊びに出たくなるだろうが、その誘惑に負けずがんばれ!