Weekend Note

2010年ブログ開設。日常、建築、旅行などについて書いています。

カイロスについて

新しい家(新築の社宅)に引っ越して1か月が経った。写真のように部屋の家具や雑貨は一通り揃い、なかなか快適な毎日を送れている。最初は生活感が薄く冷たい印象の強かった近所も、スーパーなどが揃って庶民的な第二の最寄り駅に生活の比重を移すことで馴染めてきた。

仕事については、配属先に移って担当のプロジェクトも決まり、やっと軌道に乗り始めた。同期の人たちの仲良しこよしの雰囲気よりも、部署の先輩社員の方々の淡々と落ち着いた雰囲気のほうが日常的にはずっと気楽でいい。先日はマイペースな休日出勤もして、会社のオフの時間も見られた。

ところで、ギリシア人は時間概念をクロノスとカイロスに区別した。クロノスは流れゆく時間である。しかし、これと別の時間もある。ある出来事の結果、その前の時間と、その後の時間が質的に異なる、境界になる時間。これがカイロスだ。民族や国家、そして個人もカイロスをもつ。
(参考:塩野七生『わが友マキアヴェッリ新潮文庫版1巻の佐藤優による解説)

たとえば僕の留学中の大きなカイロスのひとつは2010年10月29日金曜日の夕方、DGT.Architectsの門を叩いたとき。まさにパリでの居場所を見つけた日であり、ひいてはあの日を境に建築人生が変わったと思う。

現在の話に戻ると、働き始めてここまでは何となく自然な気持ちの流れのまま来ている。それはそれでいいのだが、意識が大きく変わるカイロスがそのうち来るのではないかと思う。ならばそれを見逃さずにとらえられる心の準備はしておこう。後から「思えばあれがカイロスだった」と気付く場合も多いのだけど、そればかり期待するのはあまりいい姿勢でない気もするから。