Weekend Note

2010年ブログ開設。日常、建築、旅行などについて書いています。

録museum&cafe

この写真はできるだけ説明的な写真を撮ったつもりではあるけれど、それでも「これじゃ行ったことがないと、どんな建物かわかんないよ」と見た人が思えば、設計者の意図がひとつ実現していることになると思う。造形が目的ではなく、木や人に寄り添う建物を、という意図が。中村拓志(ひろし)さん設計の録museum&cafeは栃木県小山市にある小さな私設美術館で、週末にはるばる訪れてきた。

小山駅からてくてく25分ほど(?)歩いていくと、ロードサイドにある緑豊かな敷地にたどり着く。小さな入り口から中に入ると、湾曲する白い空間があらわれて右が展示スペース、左に数段登って折れ曲がるとカフェがある。カフェの厨房にはオーナーであるご婦人がおられて温かい応対で迎えてくれる。100平米ほどの小さな建築だけれど、ゆがんだ空間は変化に富んでいて、庭の樹々が感じられてほっとする。

「樹木の三次元測量から建築のボリュームを決める」「樹形を反映する内部空間」「木と人が寄り添う」「優しい建築」、、、口当たりのいいフレーズを前もって読んでいたので、期待とともに半ば疑ってかかるような気持ちで行ってみたのだったが、そんな数々の説明も無理がなく自然に建築体験と結びついた。建物を建てて、敷地の残余部分に緑をしつらえておけばとりあえずサマにはなる、それはみんなわかっていることなのに、「庭と建築を同時に設計する」というテーマに大真面目に取り組んだ先に実に豊かな建築、ひいては景観が生まれるのだと、それを知ることができて、東京から2時間以上かけて行った甲斐もあったものだと嬉しかった。

ところで小山の街も少しぶらぶら歩いてみて、一見する限りでは失礼ながら、いかにもパッとしない地方都市との印象だった。土曜日の午後なのにだいぶ閑散としている。思川(おもいがわ)という川の名前は良い名前だなと思ったけれど。

http://www.roku-museum.com/