Weekend Note

2010年ブログ開設。日常、建築、旅行などについて書いています。

環境とはなにか?

直島滞在中には数多くのスポットを訪れて、地中美術館豊島美術館、いくつかの家プロジェクトなど本当に来て良かったと思える体験もまた数多かった。そして、それらの何が良かったのだろうと考えてみると、案外単純に、どれも共通して光を、周囲の自然をそれぞれ上手く取り入れていることに気付く。(逆に、暗くした室内に思わせぶりな雰囲気を演出しようとしているものや、とりあえず色とりどりしているように見える「アート」には、まず警戒してかかってしまった。ジェームズ・タレルは光と闇に相当拘っていて面白かったけど)

特に地中美術館豊島美術館は、どちらも眺望に頼らず、自然を取り入れるというのは頭上の自然光が主で、建築だけである程度自律的な環境を作っていることにまず驚いた。そして、その建築によって周囲から切り取られて作られた環境が、また周囲の自然環境を作っていくような循環を感じさせる。地中美術館の暗と明の対比の繰り返しは劇的、また豊島美術館では曇りや雨だったが、その微妙な天候にもも美術館の建築とアートが感応して、増幅さえしている。

そして、これらの建築が「環境との調和」をうたっているから内省せられる。普段の会社の仕事では、たいていオフィスビルの窓ガラスの性能や仕組みを操作して空調負荷を削減して「環境、環境」とさけんでいるのだが、(そんなことはないぞという声もあろうが)瀬戸内の島々にあるような、その場所での唯一無二の体験とはほど遠く感じる。もちろん、直接の比較はできないのは承知しているが、、、

環境という言葉は最早意味が広すぎ、めいめいが自分の都合の良いように意味合いを我田引水して使ってばかり。そんな状況を考えると、工学的・エンジニアリング的な環境と、文学的・情緒的な環境を融合させている犬島製錬所美術館にも感銘を受ける(犬島製錬所美術館では機械空調が全く無い)。地中も豊島も製錬所も、この建築にとってはこれが「環境」だという強い宣言が誰にでも伝わるメッセージになっている、その構想力に対して感動する。