Weekend Note

2010年ブログ開設。日常、建築、旅行などについて書いています。

ボストンの建築たち(ニューヨーク、ボストン旅行記 8)

最後の日はボストンの建物を巡る。ずいぶん久しぶりにがっつりと建物を見て回った。


まずはトリニティ教会とジョン・ハンコック・タワー。トリニティ教会は19世紀後半にリチャードソンの設計で建てられた教会で、ロマネスク風の意匠を取り入れたリチャードソン・ロマネスク様式と言われている。内部の整ったギリシャ十字の平面と隅々まで凝らされた装飾が素晴らしい。ジョン・ハンコック・タワーは、1976年建設のガラス張りの超高層ビル。現代の超高層ビルでほとんど唯一好きと思えた。平行四辺形の平面形状、亀裂の入れ方、トリニティ教会の写し方などなど…設計者のI・M・ペイはルーヴルのガラスのピラミッドを思い出してみても、クールかつ知的な発想や造形力は天才的とすら思った。
トリニティ教会の向かいにあるボストン公共図書館は、1848年創設のアメリカ最古の公立図書館らしい。ルネサンス風の美術館のような建築と、現代の増築部分が合わさっている。自分が頻繁に通わなくとも、いい図書館がある街や地域はなぜか好き。


続いて、イザベラ・スチュワート・ガードナー美術館。19世紀に生きた同名の美術コレクター、パトロンが創設した美術館で、ヴェネツィアの邸宅風に作られた建築と美術品が見事に融和している。ヴェネツィアへの溢れる愛情が伝わってくる美術館だ。トリニティ教会も然り、19世紀のアメリカにあっても、ヨーロッパ起源の建築様式をリスペクトを保ちつつ熱心に取り入れれば、ここまで素晴らしい雰囲気の建築を達成できるのかと思った。そしてレンゾ・ピアノの設計による新館も明るく軽快な建築で気持ちいい。今回の旅行で、ニューヨークのモルガン・ライブラリーとホイットニー美術館、このイザベラ・スチュワート・ガードナー美術館と3つピアノの建築を見たが、どれも都市的な観点での配置計画からディテールに至るまで実に見事で脱帽した。

お昼を挟んで電車でチャールズ川を渡ってMITに移動し、キャンパス内の建物を見て回る。まずは槇さんのメディアラボ。吹き抜けを多用した開放感のある研究所だった。上階には助教授のスプツニ子!の部屋もあった。

ゲーリーのスタタ・センター。奇抜な外観で、中に入ると迷路のよう。建物の機能や動線計画はしっかりと処理した上で予期せぬ面白い空間が現れるので流石。

MITチャペルは内部はきれいだったけれど、キャンパスのど真ん中の賑やかな場所に建っているのが違和感があった。期待が高かっただけに少し残念。

スティーブン・ホール設計の学生寮シモンズ・ホール(名前がややこしい)。外観はキュービックだが、内部の無数のラウンジはまるでル・コルビュジエのような洞窟的な局面の壁が立ち上がっていた。

こちらはハーヴァード大学にあるル・コルビュジエカーペンター・センター。スロープをはじめコルビュジエらしい要素がミックスされている。ただ、閑静なハーヴァードの雰囲気にはあまり馴染んでいない気も。MITチャペルと建築の置かれるキャンパスが逆の方がしっくりくる気がする。