Weekend Note

2010年ブログ開設。日常、建築、旅行などについて書いています。

世界の縮図を(イスラエル、ヨルダン旅行記 7)

9月17日 未明

トランジットのためのアブダビの空港には現地の午前三時半に到着。空港のインテリアはアラビア装飾のパターンをモチーフにしたデザインが多用されている。アンマンへのフライトまでは七時間ほど待たなければいけない。搭乗ゲートはまだ閉まっていたので、出発エリアの中央にあるロビーのゆったりと傾いた椅子でじっとしていることにする。しかしながら空調が効きすぎていて身体が冷えて、しばしばWCに通わなければならず難儀する。成田からの飛行機で右隣に座っていたおばさんがいつの間にかまた隣の席に場所をとっていて、たぶんこれからドイツ行きの飛行機に乗るのだと予想されるが、『1Q84』ドイツ語訳を読み続けている。七時間を待っているうちにロビーの待ち人たちは入れ替わるのであるが、こちらは一人旅なので、家族連れの人たちが来ると彼らが隣同士にまとまって椅子を確保できるように場所を変わってあげる。この席替えを何度か繰り返す。少しでも多くの人がハッピーになれるようパズルを組み替えることがポイント、まさに世界の縮図をアブダビに現出せしめるのだ。

夜が明ける。アンマンへのフライトも無事に離陸した。

アブダビの空港から数日後にアンマンを去るまで感じていたけれど、アラブ人は美男美女が多い。肌や顔立ちがきれいで、純朴で柔和な印象を人に与える表情や言葉のはこびかた。初めてのアラブ世界への滞在は、アラブ「への」コンプレックスを感じた数日間にもなった。でも、このように民族をひとくくりにして善悪や美醜の判断を下すのは常にけっこうきわどいことなのかもしれない。たとえばたった今「純朴」という言葉で彼らを形容したけれど、その称賛の陰にはその実、先進国化が比較的遅れている国や地域への差別的な感情も、その比率のほどは分からないけれども無意識的に幾分か紛れ込んでいるのかもしれない。または紛れ込んでいないのかもしれない。「敬意か差別か問題」は、自分の中ではまったくもって未解決だ。