Weekend Note

2010年ブログ開設。日常、建築、旅行などについて書いています。

ひとまずさよならイスラエル(イスラエル、ヨルダン旅行記 20)

9月24日 午後

前回の文章では世にもつまらない人たちについての話で取り乱してしまったが、舞台を熊本からテルアビブに戻そう。ヤッフォのはずれでタクシーを拾って、ホロンという場所にあるデザインミュージアムに移動する。ここでは日本人デザイナー佐藤オオキさんの企画展が開かれていて、その会場構成を知人が手がけていたので足を運んでみた。コールテン鋼のまあるい形が特徴的な建物の中に入り、チケットを購入して企画展について案内を受け、まずは紹介動画のコーナーに座る。佐藤さんを取り上げたNHKの「プロフェッショナル」が英語字幕で流れていて、黒地の背景画面に白い文字でキーセンテンスが映る「ポーン」の画面でも、文字が英語になっていて面白い。じっくり画面を追って、エンディングでスガシカオの歌声が響き始める頃には心と体は適度に緩められ、頭は整理され、本展鑑賞への準備ができている。

会場構成はいたって明快だ。一辺二メートルほどの腰の高さの壁で囲われた中央に、椅子や家具などのプロダクトが一種類配置されている。このセットが展示室に均等に並べられている。セットによって壁の色を微妙に塗り分けているところ点が、展示室の雰囲気の印象に対して、たぶん大きな効果をあげている。展示作品は、機智に富んだアイデアに気持ち良い「やられた感」を味わえるものばかりで、外国で見るとなおさら流石日本人と感じてしまうシンプルな美しさが際立っていた。飛岡はニュートン力学が専門ではないものの物理学者であるだけあってか、各プロダクトの形態を決定づけている要素―構造的な合理性や、大量生産可能性、もちろん機能性や見た目の美しさ―をたちどころに理解、整理しては言語化してくるので話が弾む。デザインミュージアムは初めて来たけど面白かった、これからもチェックしてみようと言ってくれて、自分としては内心ほっとした。けっこうタクシーで連れまわすことになったので。

午後四時頃にディゼンゴフに戻り、広場のレストランで一杯やって、いよいよお別れの時間だ。ホテルで荷物をピックアップし、飛岡と挨拶の握手を交わして、タクシーでベン・グリオン国際空港へ向かう。四日前のイスラエル入国時の恐怖体験が色濃く頭に残り、イスラエルにいる間も出国審査を乗り切れるかがずっと気がかりだったが、今回は拍子抜けするほど余裕で通過できた。キング・フセインの入国手続きが独特の雰囲気なのか、出国する分には勝手にどこへでも出て行ってよろしいというスタンスなのか、知る由もないが、とにかくひとまずさよならイスラエル。万事無事に流れて翌日の夜に帰国。日本はこれから気持ちの良い秋だ。