Weekend Note

2010年ブログ開設。日常、建築、旅行などについて書いています。

ガーデンウェディング

6月16日の土曜日、パリの留学仲間の結婚パーティーに招待され、参加した。留学で一緒だったのは「子どもたちに誇れるしごとを」している某ゼネコン勤務の新郎のほうだが、インテリアデザインの事務所で働いている奥さんとも彼を通じて面識があった。会場の座席に置かれていた手書きのメッセージには「blog読んでるよ」と書いてくれていて、僕はそれを結婚パーティーについてもブログに好意的に書くようにという強要だと忖度し、早速、翌日の日曜日の今日、パーティーの記念にもらったコースターに熱いハーブティーを乗せてこの小文を綴っている次第だ。

冗談はさておき、結婚パーティーはこの半年来の期待どおり、(他人の結婚式に優劣をつけるのはよくないかもしれないが)自分がこれまで出席したなかでも特にすばらしい雰囲気だった。鎌倉駅から徒歩10分ほど、山のふもとの住宅街にある大きな民家の庭を使ってのガーデンウェディング。公式情報によると、750坪の庭園を有し、鎌倉市の景観重要建築物にも指定されている邸宅を一日一組限定で披露宴や会食に貸し切っているとのこと。天候が心配されたがどうにか崩れず、羽織りものを身につけてちょうど気持ちいいくらいの涼しい午後、芝生の庭に設けられた簡素な白いテントの下にテーブルが二列に並び、微風がそよぐ開放的な会場だ。このロケーションしかり、会費やドレスコードの案内しかり、冠婚葬祭の堅苦しい決まりごとにとらわれずに楽しんでほしいという二人の想いが伝わってくる全体のセッティングだった。

ちょうど小雨がぱらつき始めたのと前後して、終盤のデザートビュッフェからは庭を見渡せる屋内の広間に移動した。ここで最後に、新郎新婦が座っていた高砂の椅子が、新郎は丸一日まったく気づかなかったけれど、実はインテリアデザイナーの奥さんがこの日とこれからのために自らデザインしたものだったことが、その過程を記録した動画で明かされた。意外性のある感動的なエピソード、まるでO・ヘンリーの短編小説のようだ。

   *   *   *

僕としては相当久々に会う人も含めて留学時代の友人たちと会えたのも貴重だった。3月に隈研吾展を案内してくれたイケメンと定評の友人は遅れて到着し、招待客が最初に受付で参加していたサンドアート(木枠のついた四角い透明な容器のなかに、各々色とりどりの砂を注ぎ、それが地層のようになだらかに重なっていく。最後に新郎新婦が砂を注いで容器に砂が満ちる)をしておらず、食事中に同じく遅れて来た友人と二人で、綺麗な女性スタッフの方に連れられて砂を注ぎに席を立った。そのとき「ここのスタッフですか?」と聞いた友人に対し、女性スタッフの方が「いえ、(新郎新婦の)お二人の専属です」と答えたところ、その友人、サンドアートに遅れた自分たち二人の専属だと勘違いして、しばらく喜んでいたらしい。このポジティブ野郎…。

とはいえ、3年前に福岡で開かれた彼の結婚式と披露宴も、感謝と祝福の言葉や余興のひとつひとつに優しさと実感がこもった、やはり最も忘れがたい祝いの席としてずっと記憶に残っているのだった。留学時代の友人たちには時が経っても変わらない敬意を抱いている。そして自分にとって、パリ、福岡、鎌倉など、互いに共有した地名が新たに積まれることは、その心境を再認識する機会でもある。