Weekend Note

2010年ブログ開設。日常、建築、旅行などについて書いています。

迷惑料

二年前まで住んでいた社宅で今、各部屋でのカビの発生が問題になっていて、過去に居住していた人でも被害の申請をすれば一律の迷惑料が振り込まれる。会社から突然そんな内容のお知らせのメールが来た。たしかにバルコニーの目の前が屋敷林に面していてじめじめした部屋ではあったが、自分に関しては被害の程度に比して迷惑料が高額に思われたので、申請はせずに放置していた。リマインドのメールも無視し、申請の締切日が過ぎた。迷惑料なり補償金なり、もらえるものはもらおうというという態度もありえるだろうし、がめつくせしめる方がトクではあろうが、一方でそうした姿勢は、ぎすぎすしたクレーム社会の形成に加担するかもしれない。目先の利益を追う意地汚さが、巡り巡って自分に跳ね返ってくるのがオチだろう。そんなことを考えていた。

ところが、締切日を過ぎてしばらくして、またもリマインドのメールが届いた。とにかく迷惑料を受け取ってほしいとの解釈も成立するような雰囲気が感じられた。宛先欄の氏名の数が最初に比べて相当に少なくなっているところを見ると、多くの元居住者が迷惑料を受け取るようだ。全員に補償が行きわたらなければ、担当者の方が不行き届きと責められるのかもしれない。もはや何が良いのかわからなくなり、結局、周りに流されるようにして申請書を提出しに行き、受理された。どこか釈然としない気持ちを抱きつつ、しかしデスクに戻るとすぐに手帳を取り出して、振込予定日のマスに迷惑料と記入した。お出かけの予定でも書き入れるみたいに。チャンピオンズリーグの楽しみな対戦カードでもメモするみたいに。湿気の被害に加えて、見て見ぬふりをせずに済ませたかった自分のさもしさを思い知らされたことに対する迷惑料も申請したいような気がしてきた。いやしい根性が、まさにカビのように増殖してゆく……。