Weekend Note

2010年ブログ開設。日常、建築、旅行などについて書いています。

「くまのもの」などなど

ここのところ、書きとどめておきたいような建築にまつわる出来事が三つ続いた。ひとつめは、法政大学での陣内秀信先生の最終講義。先生の数十年におよぶ膨大なフィールドワークを一気に振り返る講義は、イタリアをはじめとする世界を一気に旅したようなエンターテイメントでもあった。

ふたつめは、東大での伊藤毅先生の退官イベント。平日だったので第一部と第二部の鼎談は聞けず、第三部の先生の講義から会場に加わったが、伊藤先生の学生や研究チームを導くおおらかな人間性や、鋭いキーワード設定のもとになる学際的で俯瞰的な視点などに久々に触れ、あらためて尊敬の念を深めた。その後の伊藤先生を囲む会では、同級生や先輩後輩の懐かしい顔、顔、顔。皆お元気そうで何より。

みっつめは、東京ステーションギャラリーでの隈研吾展「くまのもの」。隈事務所スタッフの友人が誘ってくれて、彼と留学仲間たちとの計五人で回った。彼のおかげで無料で入れたうえ、丁寧的確なガイドもしてくれて大満足。展覧会は竹、木、石などの素材ごとにコーナー分けされていて、大小様々なプロジェクトでの各素材の扱いに焦点を当てている。この構成は最近話題となった新国立美術館での安藤忠雄展と好対照をなしていて興味深かった。隈さんも、安藤さんの展覧会を意識して会場構成に手を加えたとのこと。安藤さんが自分のこれまでの軌跡を辿り、また建物にまつわる人々の思いを強調していたのに対し、隈さんはあくまで物質が主役とのスタンスを、展覧会の見せ方において貫いている。自らを唯物主義者と断言する隈さんに、2018年3月現在の自分は共感している。

さて、これらの機会に学生時代の友人知人とたてつづけに再会したのだけれど、そのときの自分の心の持ちようが、なんとなくラクになったような気がする。以前は無理をしていたとか、気が張っていたというわけでもない。大きな変化でもない。でも、漠然とした感覚で、まだ十分に言語化できていないけれど、確かにラクになった気がするのだな。今回は陣内先生の最終講義について単独のトピックで書くことになるかと思いきや、伊藤先生の退官イベントもあるので合わせて書こうと思い直し、さらに隈さんの展覧会が続いたのでそれも取りこんだところ、自分自身の対人の作法を省みるような流れになった。