Weekend Note

2010年ブログ開設。日常、建築、旅行などについて書いています。

フランソワ賞の設立

ずいぶん前にブログに書いたことだけれど、学生時代は、サッカーの世界最優秀選手賞「バロンドール」にインスパイアされて、自分の身近な人でシーズンを通して最も印象に残った人、かつ後から振り返って大きな影響を受けた人に、脳内で勝手に自分版バロンドールを贈っていた。しかし就職してからは、半年という短いスパンで人から新鮮な刺激を受けるという機会が減り、バロンドールのシステムが生活にそぐわなくなっていった。加えて、受賞者の方々とは、自分や彼らの住む場所が変わったり、共通のコミュニティで集まる機会がなくなったりして疎遠になってしまうケースが多く、まさに「バロンドールの呪い」と呼ぶべき現象も目立っていた。

というわけで、バロンドールはその役割を終えたのだろう、大学院最後の冬学期をもって正式に停止した。十人ほどの受賞者の方々には心から感謝したい。もちろんそれ以外に、現実のサッカー界のアンドレス・イニエスタのように、ついに受賞には至らずとも、いつまでも記憶に残る人たちもたくさんいる。

そして代わりのようにして、就職して以来、首題の賞が自分の中で設立された(正確には最近設立され、現在から遡及する形で過去の受賞者は決定した)。家と会社の往復よりは外の世界に目を向けたいという気持ちの、いい意味で浮世離れしていたいという願望の表れなのだろう、この賞は身近な人ではなく、基本的にはメディアを通じて自分が影響を受けた人を対象としている。存命中であることという縛りは設けているが、年齢、性別、職業等は問わない。原則として年に一人の選出で、該当者なしの年もある。この賞の評価基準として特徴的なのは、間接的な影響を非常に重視していること。だから賞の名前は「フランソワ・トリュフォー賞」、通称「フランソワ賞」と決めた。自分にとっては大学1年生の終わり頃に知り、彼の映画作品のみならず彼をとりまく映画監督や俳優たち、さらにパリやフランス全般にまで興味が広がっていくきっかけとなったフランソワ・トリュフォーの名前を冠することにしたのだ。

この賞も2013年から始まり今年で6年目。バロンドール時代も数えると、自分も「選考委員」としての長いキャリアをいつの間にか積み重ねてきた。これまでの経験の中で気付いたことは、候補者が賞を欲する以上に、賞の側が毎回それにふさわしい卓越した受賞者を必要としているということ。これは賞と名のつくものが一般的にもつ傾向だろう。もうひとつ実感したことは、世の中の多くの人に名前が知られることはすごいけれど、それとはまた別に、特定の一人に直接間接に深い影響を与えることも大変に困難で、ある種の尊さすらある現象なのだということ。

今や自分の中で最も権威のある賞としての伝統が培われてきたフランソワ賞。今年はまだ4か月が経ったにすぎないが、現時点での有力候補者の〇〇さんがこの調子を維持して受賞すれば、最年少受賞記録を大幅に更新することになる…などなど、やはり楽しみが尽きない催しなのだった。


   Prix François Truffaut
      2018 〇〇


美しく加工されたガラス製で、こんなふうに名前が中央に刻印された表彰盾を、昨年までの分も含めて勝手に用意したくもなる。