Weekend Note

2010年ブログ開設。日常、建築、旅行などについて書いています。

クロースの言葉から

連休は遠くには出かけず、東京でフットサルなどをして過ごしていた。それよりも、例年のとおり、この時期は欧州サッカーのチャンピオンズリーグが佳境である。録画で見た準決勝レアル・マドリードvsバイエルン・ミュンヘンのセカンドレグは、まさに現代サッカーの最高峰と呼ぶにふさわしい好ゲームだった。ひとつひとつのプレーの精度。最後の瞬間までどちらが勝ち上がるか分からない緊張感。来月から始まるロシアワールドカップでも、内容においてこれを超える試合は生まれない可能性の方が高いと思う。

結果は2-2の引き分けで、2戦合計4-3でバイエルンを降したレアルが決勝進出。選手、監督たちの試合後のコメントも、このステージの試合につきものの後味の悪さはあまりなかった。最後のCLでの優勝の夢が潰えた老将ユップ・ハインケスは無念さを滲ませながらも両チームの健闘を称えて名将の品格を保ち、古巣相手に躍動しつつも敗れたハメス・ロドリゲスはミスを犯してしまった仲間を気遣うコメントにより人々の胸を熱くさせ、大会三連覇という大偉業へ王手をかけたセルヒオ・ラモスは常勝軍団を束ねるキャプテンのとしての自信と圧倒的なカリスマ性を示した。そんな中でも、特に興味深く感じたのがレアルのトニ・クロースの言葉。

「今日のような試合のために、サッカー選手になったと言えるね」

試合を通じて、レアルは逆転突破を目指すバイエルンの圧力に押され気味だった。世界最高のセントラルハーフで百戦錬磨のクロースにとっては、これまでのクラブとドイツ代表での経験の中で、完璧に試合を支配して勝ったゲームもいくつもある。だから、薄氷を踏むような思いで勝利した試合に対してこのようなコメントをするのは少し意外だった。しかし思い返してみると、内容的に完勝と言えなくとも、スタジアムを含めた気迫や一体感はまれに見るものがあった。

クロースの言葉から、サッカーの醍醐味がひとつではないとあらためて思い至る。たとえば、イメージ通りに自由にプレーできたときの喜びもあれば、九割がた攻められていても「耐えてひと刺し」で勝つ試合の快感もある。中学校の最後の大会の時期のことを久しぶりに詳しく思い出した。自分はレギュラーではなかったので試合に出られる時間は限られていたが、練習でも試合当日のサポートでも、できることはいくらでもあったのだった。クロースの言葉になぞれえるなら、こういう時期を過ごすためにサッカーをしてきたのだし、サッカーができることに感謝もしたい。そう思えるような充実感が、あの時期にはあった。