‘われらの貴婦人'にて
‘われらの貴婦人'の意味を表すノートルダム。火曜日の夜、ノートルダム大聖堂でパイプオルガンのコンサートがあった。
テレビの「世界遺産」でしか見たことのなかったような、厳かな空気と音響。明かりが低い位置に抑えられた、やや薄暗い大空間のふもとで、賛美歌を歌う三人の青い僧衣が映える。寒さの中じっと座っているだけだが、まったくたいくつを感じない。演奏と賛美歌に耳をすませ、考えごとをしているうちにあっという間に90分が経つ。
パリでいろんな人たちと出会っただけで、自分がすごくなったように感じてしまうのは危険だと思う。とはいえ、一緒に聴きに行ったメンバーが、色々入り乱れる感じで面白かった。僕ら建築の留学生たち、土木の学校ポンゼショッセに留学中の三人。それに九州大に留学していたフランス人のバチ、ダンサーのさちさん、東大の教養学部の先輩で、今はパリの大学院(?)に通っているフランス人ハーフのジュリア。
とくにジュリアは、学部一年生のときの英語の授業での知り合いで、じつに四年以上ぶりに会った。会うのは三回目くらい。とりわけ仲がいいわけではない。今回もそんなに話さなかった。でも、トリュフォーを最初に勧めてくれたという一事によって、忘れないであろう人だ。淡々としたふしぎな再会だった。