Weekend Note

2010年ブログ開設。日常、建築、旅行などについて書いています。

南フランス〜北イタリアの旅

ヴェネツィアの死(南仏、北イタリア旅行記 20)

2年前の夏に読んだ塩野七生の『海の都の物語』が、今回ヴェネツィアを体験するときのひとつの基準点になっていた。ヴェネツィア共和国の建国から滅亡までの一千年を描いた歴史小説で、でも、年代をふまえつつも、十数章それぞれの角度からヴェネツィアに迫っ…

水の都の写真たち(南仏、北イタリア旅行記 19)

自分の知る限り最も美しい文章をものする随筆家の須賀敦子さんがヴェネツィアについて、「たえず興行中のひとつの大きな演劇空間」と表現していたのが強く印象に残っていて、だから今日はヴェネツィアで撮った写真を、人や動物を撮ったものを選んで10個載せ…

スカルパを巡る(南仏、北イタリア旅行記 18)

今朝は早起き。ヴェネツィアから遠出して、カルロ・スカルパの建築を見に行く。まず電車で1時間、次いで塔と城を目印にバスターミナルまで歩き、バールの主人から情報を得て、バスに揺られて数十分…とRPGさながらのルートをたどり、お目当ての「ブリオン・ヴ…

パラーディオの街(南仏、北イタリア旅行記 17)

今日はヴェネツィアから日帰りでヴィチェンツァに行き、パラーディオ*1の建築を見て回る。まずは劇場建築のテアトロ・オリンピコ。これがいきなりすごい!場内は劇場としては小さいくらいだが、舞台背面の壁と客席後ろの楕円状に並んだ列柱で囲まれた空間に…

ヴェネツィアの島々(南仏、北イタリア旅行記 16)

ヴェネツィアは街が発展して観光名所の大部分が集中している本島の他にも、大小100以上の島々がある。たとえばユースホステルも本島から数百メートル離れたジュデッカ島にある。今日は朝から夕方近くまでかけて主な島々を巡り、船のルートを一周するようにし…

素晴らしき絵画たち(南仏、北イタリア旅行記 15)

ヴェネツィアをぐるぐる回っているうちに、貴族の館や教会のひとつひとつがどれも大変に美しく飾られていることに気がついた。他ならば街にひとつあれば満足というスポットが数え切れないほどある。特に壁画などの絵画がすごい。そこで『地球の歩き方』に載…

ヴェネツィアところどころ(南仏、北イタリア旅行記 14)

旅も終盤、今日からはヴェネツィアに滞在し、パリに帰る。写真は6泊お世話になったユースホステルの前からの眺め。まずはヴァポレット(水上バス)の券を買って、船と徒歩で動き回り、この水の都の独特のテンポに身体を慣らしていく。ヴェネツィアは明るい。…

カステルヴェッキオ(南仏、北イタリア旅行記 13)

今日は一日中ヴェローナの街をじっくり歩く。今回旅したイタリアの街の中でも特に美しい。カプチーノを飲みながらスカルパ*1設計のヴェローナ銀行の立面を観察し、塔に登って街を見晴らし、古代ローマの円形闘技場に感嘆する。そして午後3時、カステルヴェッ…

もうひとつの旅(南仏、北イタリア旅行記 12)

やや気取ったタイトルだが、まあいいかあ。旅行は移動時間などの暇な時間もかなり多いので、その間にブログに書くことを考えたり、本を読んだりする。もうひとつの旅とは読書のこと。何冊か読んだうち圧倒的に面白かったのが、200年前のイギリスの女流作家ジ…

サンシーロ観戦記(南仏、北イタリア旅行記 11)

今日はセリエAのインテル対カリアリの試合を観戦した。地下鉄の駅から降りて歩くこと数十分、サンシーロの大きな円柱が見えてくる。中に入るとコンコースが全く魅力のない狭い通路でしかないのが残念だが、場内の巨大さは見事だ。バックスタンド上段の自由席…

ガララテーゼ、イタリア人の都市(南仏、北イタリア旅行記 10)

ミラノ郊外にアルド・ロッシ*1設計のガララテーゼの集合住宅を見に行く。西側で芝生の公園に面していて、4階建て、長さ182m、幅12m。地上階の常軌を逸した壁柱の列柱のピロティ空間が最大の特徴だ。素っ気ないが、いや、だからこそ不思議と居心地よくもある…

ジェノヴァ〜ミラノ(南仏、北イタリア旅行記 9)

朝早くニースを発ち、ミラノに向かう。途中ジェノヴァに寄り、数時間だけ歩いて回る。まずレンゾ・ピアノの都市デザインで再生された港を見に行く。聞いたとおり高架道路によって港湾と街はまだまだ隔てられていて、再生がなされる前はさぞ悲惨だったのだろ…

マントンとジャン・コクトー(南仏、北イタリア旅行記 8)

ニースとモナコのせいで地の果てまで落ちたコート・ダジュール地方の印象が、イタリアとの国境も目前の小さな港町マントンによって少し回復した。マントン駅で降りて一部の海岸沿いを歩くと、相変わらずちゃちなホテルが並んでいて、ああ3連敗かと思ったが、…

モナコは最低(南仏、北イタリア旅行記 7)

モナコはパリの中心部のようなエレガンスが海と山の間に広がっているリゾート地だと勝手に想像していたので、実際に行ってみて、予想とのあまりの違いに愕然(がくぜん)とした。街並みには歴史などなく、それどころか建物も道も恐ろしくちゃちで低俗でウソ…

ル・トロネ修道院(南仏、北イタリア旅行記 6)

アヴィニョンから4人で電車やタクシーを乗り継ぎ、16時頃ついにル・トロネ修道院にたどり着く。天気は雨だが、しっとりとした雨音によって、気持ちが沈静化した状態で訪れることができた。あの音はよかった。「祈り、働け」という修道院の教えをそのまま表す…

ミュンヘンの3人(南仏、北イタリア旅行記 5)

この数日間はミュンヘンに留学中の3人に便乗させてもらって一緒に旅する。レンタカーを借りる予定だったのが借りられないというトラブルはあったが、タクシー等を利用してほぼ予定通りにいくつかの村、そしてル・トロネ修道院を訪れた。ミュンヘン組も仲が良…

たそがれのヴィルヌーヴ(南仏、北イタリア旅行記 4)

今日は5泊したホステルを午前中にチェックアウト。今日の夕方からミュンヘンの留学生3人と合流するが、それまでは重い荷物を持ち歩かなければならず(駅のロッカーが使えなかった)、ネットカフェや公園でのんびりと過ごす。午後は市内バスでアヴィニョンと…

マルセイユとユニテ・ダビタシオン(南仏、北イタリア旅行記 3)

外観しか見られなかったフィルミニのユニテは違和感が強かったが、最も名高いマルセイユのユニテは今度こそよかった。中を歩くと、「建築に都市を内包する」「コルビュジエの構想力」などのユニテを評する言い回しはそういうことだったのね、と思い知る。巨…

ポン・デュ・ガールから連想したこと(南仏、北イタリア旅行記 2)

今日はアヴィニョンからニームへ行く。ニームの街を少しぶらついてから、バスで45分、山間部に作られた古代ローマの水道橋ポン・デュ・ガールを訪れる。長年の歳月を経て今や自然と一体となった水道橋が現れてくると、壮大なスケールに圧倒される。水を流す…

アヴィニョンで誕生日、しかし(南仏、北イタリア旅行記 1)

2月7日から28日までの南フランス、北イタリアの旅。まずは南仏プロヴァンス地方の街アヴィニョンに5泊し、周辺を回る。その後ミュンヘンに留学中のAUSMIP生らと合流して数日共に行動したのち解散して、僕はイタリアへ抜けるというコースをたどる。8日の誕生…