Weekend Note

2010年ブログ開設。日常、建築、旅行などについて書いています。

素晴らしき絵画たち(南仏、北イタリア旅行記 15)

ヴェネツィアをぐるぐる回っているうちに、貴族の館や教会のひとつひとつがどれも大変に美しく飾られていることに気がついた。他ならば街にひとつあれば満足というスポットが数え切れないほどある。特に壁画などの絵画がすごい。

そこで『地球の歩き方』に載っている場所をかたっぱしから訪ねてみることにした。サンなんとか教会とか、なんちゃらかんちゃらとか、どれがどれか分からなくなるが、まめまめしく暗記するよりも、それらの全体が発するヴェネツィアが作り上げた絢爛な文化を少しでも感じられれば、それでオッケー。

まずはヴェネツィア共和国の政治の中枢だったパラッツォ・ドゥカーレ(元首宮殿)に入る。白と薄いピンクの外観からしてきわめて美しいこの建築は、内部も明るく美しく、政治を司っていた緊張感も漂う。そして、各部屋や広間が傑作の絵画で埋め尽くされていて、結果的に壮大な美術館になっている。題材は、ヴェネツィアの政治の一応のトップであった元首(ドージェ)が聖人に祈願しているという特殊なものが多い。健全な政教分離のなされていたヴェネツィアでも、絵画の中では景気づけをしていたのかと思うとほほえましい。

部屋の空間と絵画が調和している。言ってしまえば簡単だが、そんな場所では絵を見てもいい、絵を見なくてもいい、不思議な居心地よさがあるようだった。

パラッツォ・ドゥカーレは代表的な観光スポットだけれど、前述のように知名度のぐっと下がる教会などにもことごとく絵画に…、より正確に言うと、絵画を含めた場所として感銘を受ける。近代以降の美術館の中だけでない、街全体に分散して宝を隠し持っているような、自分にとって新しいヴェネツィアの印象を得た。