Weekend Note

2010年ブログ開設。日常、建築、旅行などについて書いています。

海辺のバーベキュー(イスラエル、ヨルダン旅行記 18)

9月23日 夜

七泊八日の旅行の最後の夕食は、偶然にもテルアビブの海辺でのバーベキューに参加させてもらえた。飛岡の彼女のTさんが現地のバレエ団のプリマドンナとして活躍していて、テルアビブの日本人ダンサーの人たちともつながりがあり、そのコミュニティの中のイスラエル人の誕生日パーティーとしてバーベキューが開かれるということで、僕も誘ってくれたのだった。ありがたい。ちなみにテルアビブはパフォーミングアーツが盛んな都市でもあり、俳優の森山未來さんがイスラエルで一年間ダンスの活動をしていた際にも、飛岡たちは彼と親交を持ったようだ。

夕方に飛岡とTさんがホテルまで迎えに来てくれ、タクシーで海岸へ向かう。日も完全に暮れたころ皆がいる場所を見つけると、バーベキューが始まったところのようだった。日本人数人とイスラエル人(その他の国の人もいたかもしれない)十人くらいが集まっている。料理担当はブラジル系とアルゼンチン系の人たちで、つまりバーベキューが得意な人たちというわけで、チョリソーや肉の味付けが絶妙、焼き加減も絶妙、ソースなんかも味がしっかりしていて、今まで一番美味しいバーベキューだったかもしれない。

少し肌寒い夜風の吹く海辺で色々な話をする。ダンサーやバレリーナというのは、楽しくも大変な職業なのだな。ナタリー・ポートマンバレリーナに扮した映画「ブラック・スワン」を思い出して、レッスンと公演の続くストイックな日々、怪我との戦い、ライバルとの競争など、あの映画は観ているだけで苦しいけれどあんな感じの毎日なの?とTさんに尋ねると、まさにあんな感じなのだと言う。華やかな職業などないのだなとあらためて実感する。もちろん、どこかに華やかな職業があるかもなどという幻想を抱くほどにはもう子供でないつもりでいたけれど、もしまだ自分のどこかにその幻想が残っているとしたら、今度こそ完全にテルアビブの海辺に置いていこう。ダンスやバレエの話の他には、飛岡とやっぱり熊本地震の話などする。あの時はお互い大変でしたからねぇ。

日本人ダンサーのボーイフレンドのイスラエル人との話も面白かった。ジブリ映画が好き(?)なようで、ポニョや「ハウルの動く城」のカルシファーの真似をして喜んでいる。カルシファーの「やだよ、ソフィー」の台詞が得意で、ゆえに、拒絶の意思を日本語で伝えることができる。ただしカルシファーの声音と口調でしか言えない。だから「君が真似してるのは人間じゃないからね。火だからね!」と念を押しておいた。聞くところによると、彼はイスラエルのとある町のユダヤ信仰の篤い一家に生まれ育ったが、宗教色の薄い彼は一人で家を飛び出して、今はテルアビブでダンサーをしている。色々な人生があるものだ。