Weekend Note

2010年ブログ開設。日常、建築、旅行などについて書いています。

サヴォア邸 (1)

日曜日、旅行で来て以来2年ぶりにコルビュジエサヴォア邸を訪れた。すると岸田研の助教授の木内さんに会ってびっくり。数ヶ月ヴェネツィアを中心にヨーロッパに滞在するとのこと。ル・コルビュジエカルロ・スカルパを主に回るという。

サヴォア邸の中に入ると、コルビュジエが「建築的プロムナード(散策路)」と自ら呼ぶように、流れるような空間のシークエンスが展開していく。これは中央にらせん階段とスロープの垂直動線があり、周りを諸室が囲うような回遊的なプランから来るものだと思うが、特に見学者が多くいたので、建物の中を一歩進むごとに数々の視線が交錯する。これは本当に面白い空間体験で、実際に訪れなければ想像するのは難しい。
2年前に来たときは、この次々とショットが展開していくことが何より印象的だったが、今回はもうひとつ強く感じたことがあった。

先々週パリ市内のコルビュジエのアパートを見に行ったとき、小さな部屋でもちょっとしたスペースでも、光の取り入れ方、壁の色、天井高の変化、曲線の使用、オブジェ的な造り付けの家具などで、特別な空間に変えてしまうワザ驚いた。サヴォア邸でも、なんでもない部屋でも完結性を与えてしまう技巧は健在だ。一例を挙げれば、細い廊下の片方の壁は普通の白に、もう片方が一面青色に塗られている。小さな天窓から光が取り入れられ、白い壁に反対の青色が反射して、おぼろげなグラデーションができる。

これら、空間の流動性と完結性のせめぎ合いがすごい。止まったと思ったら流れ出す。動いていたと思ったらまた止まる。なかなか言葉にするのが難しいが…。単に住むという機能を満たす目的からだけでは導けると思えない豊かさがある。

そんなことを考えながら建物の中を回った後で外の芝生に出ると、外からサヴォア邸を観察していた木内さんがいたのでしばらく会話する。上に書いたような、感じたことを素直に話すと、確かにその通りだと言ってくれた。そして、木内さんがどんな所を見ているのかと質問すると、コルビュジエサヴォア邸にさらに膨大な情報を込めたことがわかってきたのだった。(つづく)