Weekend Note

2010年ブログ開設。日常、建築、旅行などについて書いています。

パレ・ド・トーキョー


ラカトン&ヴァッサルのパリでの作品がパレ・ド・トーキョー。1937年の万博の日本館として建てられ、曲折を経て、現代アートの美術館として2002年に開館した。改修を行ったのがL&V。内装を剥がし、壊し、コンクリートの廃墟のような空間が残される。そうして一般的な美術館によくある、お高くとまった堅苦しさは漂白される。しかしアーティストであれ訪問者であれ、どこか人を掻き立てるものがある。これにはやられた、と思った建築家は多かったのではないだろうか。

また興味深いのが、モロッコマラケシュのLa place Djemaa-el-Fnaaを参照したと彼らが書いていることだ(ヴァッサルはカサブランカ生まれらしい)。改修の方法論として奇をてらったわけでなく、もっと確たる空間のイメージがあったということか。

現在パレ・ド・トーキョーは拡張工事中で、建築家は引き続きL&V。来年に完成予定らしい。……と、今この一文を書いてみて、「完成」という言葉はどうもふさわしくないなあと気付く。

建築とは物体であるだけなく、そこで起こる出来事であり現象である。よく建築家はこのような言説を述べるが、こうした言葉とデザインの整合性が納得できる建築体験は決して多くない。その中にあってパレ・ド・トーキョーの本質は「建物」ではなく、確かに現象であると感じた。