Weekend Note

2010年ブログ開設。日常、建築、旅行などについて書いています。

ルーヴル・ランスのラウンドテーブル

2008年の秋のこと、ルーヴル美術館にて、ルーヴル・ランスの設計者に選ばれたSANAA妹島和世西沢立衛)とランドスケープのカトリーヌ・モズバを招いて、ディスカッションのイベントが催されたらしい。司会を務めたキュレーターがその時の内容を盛り込んだ本を出すとかで、内容の確認がカトリーヌの事務所にも来た。おかげでディスカッションが文字に起こされたものを読むことができた。A4十数枚、英語に訳されていて、所々に赤字で訂正が入っている。

国民性を反映してかはわからないが、予想通り、歯に着せた衣が薄着だったのはフランス人のランドスケープ・アーキテクトで、SANAAの二人は当たり障りの無い受け答えでかわしたという印象だった。そもそも通訳が良くなかったらしい。オーディエンスから鋭い質問が飛び出ても明らかに答えがかみ合っていなかった。どうせならフローラン・ダバディでやってほしかったよ。

さて、一方のカトリーヌはというと、過去に協働した建築家や、建築やランドスケープに対する一般的なクライアントの態度に対する批判も語っていた。また、生物学のアナロジーなども持ち出して、その場にいた観覧客には好評だったようだ。学校のプロジェなどでもつくづく感じたが、日本人の感覚からすると胡散臭いくらいにハッタリもきかせながら滔滔と語るくらいが、フランスではウケるのではないかと思う(カトリーヌはそれほど胡散臭くもなかったが)。

ルーヴル・ランスのプロジェクトについては、このラウンドテーブルでは抽象的な話が多かった。たとえばランスの敷地には採掘場の跡地があり、その歴史を尊重しなければならないとそれぞれが語っていたが、だから具体的に建築やランドスケープをどうしたということはあまり語られなかった。だから読み終わって少し不満ではあったが、まあ、完成を楽しみにということか。