Weekend Note

2010年ブログ開設。日常、建築、旅行などについて書いています。

アールトを巡る(スウェーデン、フィンランド旅行記 6)

北欧旅行は続き、ストックホルムから飛行機で1時間ほど、フィンランドヘルシンキに移動する。首都なのにとてものんびりしていて心地よかった。合計6泊してすっかり愛着を持つにいたったが、今回はアールトについて。

フィンランドに通貨ユーロが導入されるまでは紙幣の肖像になるほどアルヴァ・アールトがフィンランドで英雄扱いされているのは知っていたが、実際行ってみると、予想以上に人気があり愛されているように感じた。それは、いい建物を作っただけでなく、家具デザインなどで業績を残し、産業を築いた人、またフィンランドの名声を高めた人という認識があるから。フィンランドが小国であることを差し引いても、国スケールでこれほど歴史上のスターとして親しまれている建築家は他にいないのでは。

さて、ヘルシンキとその周辺でもいくつかアールトの建築を訪れた。しかし、先に言ってしまえば、パリ郊外のメゾン・カレがよすぎたのか、直前にスウェーデンで見たアスプルンドの建築がすごすぎたのか、それらに比べればあまり感動するところはなかった。


高級住宅街にある、アトリエ、および近所にある自邸。素朴なたたずまいや上品なインテリアは特に日本人が好きそう。僕は暑い日に、しかも何人もが一緒に見学するガイドツアーで家に入ったので、風通しの悪い窮屈さも感じてしまったが、明らかに夏をむねとして作られていない。れんがの暖炉や柔らかい曲線のインテリアは、他のいつよりも冬にありがたく感じられるのだろう。


ヘルシンキ工科大学
巧みに段差をつけていたり、講堂や図書館のトップライトの光の扱いなどは本当にさすが、見事と思った。けれど全体の印象としては、あくまで既視感のある「校舎」だと強く感じた。アールトの部分的なスーパーテクニックをもってしても拭えきれていないような、近代建築の冷たい息のほうをより強く感じてしまった。

メゾン・カレが一番良くて、わざわざフィンランドまで来ることはなかったのではないかとすら一瞬頭をよぎったが、数日後、森と湖に囲まれた環境に建つ傑作を訪れて、やはり来てよかったと思うことになった。