サイトウ・キネン、本番
18日から生まれ故郷である松本市の祖父の家に来ている。
今回来たのは祖父に会うのはもちろん、サイトウ・キネンのオペラのリハーサルを見るため。サイトウ・キネン・フェスティバルは小沢征爾のディレクションにより松本市で毎年夏に行なわれる国際的な音楽祭。パリの建築事務所DGTが今年のオペラの舞台設計を手がけていて、僕はインターンをしていた時に仕事を手伝っていたので、リハーサルを鑑賞できる招待の葉書を田根さんが手配してくれた。ちなみに会場は伊東豊雄設計のまつもと市民芸術館。個人的には伊東豊雄はべつに好きではないが、この建物は秀逸だ。
18日に着いた夜には田根さんやスタッフの木下さん、また他の分野の担当の人たちに少しお会いして、19日の午後からリハーサルが開演になった。リハーサルといっても音響効果や雰囲気を本番に近づけるため、関係者含めてかなりの数の観客が入る。演目はハンガリーの作曲家バルトークのバレエ「中国の不思議な役人」とオペラ「青ひげ公の城」のふたつで、小澤さんは「青ひげ」を指揮する。
僕としては、模型で見ていただけのものが実物になって目の前に建ち現れているのは不思議な気持ちだった。自分もこの歌劇を作り上げるプロセスの一部に関わったのだなあ、と。また、実際に歌手やダンサーの人たちが空間に入り乱れているさまを見るのは、想像を超える迫力があった。公演が終わると、舞台の上での俳優の人たちの挨拶に小澤さんがひょこひょこと加わってきて、盛大な拍手で迎えられた。
単純に観劇を楽しむのではなく、普通の観客は気にしないような細部や道具係の人たちの動きに注目して、かなり気疲れもした。小澤さんが復帰して指揮をするだけで世間一般的にはハッピーエンドにはなると思うけれど、作る側に関わらせてもらった僕としてはそれだけで満足してはいけないのだろう。
ちょうど今頃は本番の公演中。成功を祈るばかりだ。