Weekend Note

2010年ブログ開設。日常、建築、旅行などについて書いています。

SOMEWHERE

就活が終わり、フランス調査旅行も終わった年度末、さすがに時間的にも精神的にもゆとりが出てきた。建築事務所のバイトに行ったり、建築や展覧会や講演を見聞きに行ったり、お酒を飲んだり、高校の友達と久しぶりに会ったり、本を読んだり。DVDを借りてきて映画を観る時間も増えた。

なかでも'SOMEWERE'は良かった。ソフィア・コッポラ監督作品だし、パリでメトロの駅の通路にポスターが貼られていた時から気になっていたしと期待していた映画だが、実際お見事。センスと余裕に満ちた映像描写はさすが。

ローマの休日」をはじめ、退屈なホテル暮らしvs刺激的な都会の雑踏なんて図式はありがちだと思うけれど、ソフィア・コッポラの場合はひと味違う。映画界のサラブレットとして育った生い立ちが影響してか、セレブの倦怠感に対するまなざしも冷たいわけではない(「ロスト・イン・トランスレーション」に表れているように)。そこがいいと思う。

SOMEWHEREはそんな彼女の長所がさらに洗練された、爽やかな倦怠感とでも言うべき雰囲気をたっぷり味わえる。映画スターの主人公の生活や小道具類も十分贅沢だけれど、嫌味は感じない。寂しさを吐露する場面もあるが、悲しみに酔わせるという愚は犯さない。主人公の心の成長、あるいは娘との交流もかなり見応えがあるが、それも「よかったらどうぞ」と穏やかに迫ってくる感じで、押しつけがましさとは無縁。

最後に、邦題をつけず、カタカナ表記にすらせず、アルファベットのままSOMEWHEREのタイトルにしたところもいいですね。