Weekend Note

2010年ブログ開設。日常、建築、旅行などについて書いています。

子供たちの時間

君や 僕に ちょっと似ている
a bit like you and me...

横浜美術館で開催されている奈良美智展に行ってきた。ヨーロッパの所々でも作品集などを見かけたアーティストなだけに、一度は見てみたかった。

あの例の子供たちが、紙や板に描かれた絵に、さらにブロンズの彫刻にと様々に息づいていた。フレーズ付きの絵も多かった。なかでもキャンバスにアクリルで描かれた絵たちが色彩的にも綺麗で、絵の中の女の子の表情も印象的だった。これはフレーズは無し。絵と向き合っているとしびれを切らして「言いたいことがあるならハッキリ言えよ!」と言いたくなる、そんな表情だ。もちろん相手は何も言わない。

奈良美智については特別に詳しいわけではないし、何故子供たちばかり描くのかとか、「彼女たち」が何を思っているのかとかは知らない。でも僕の感想としては、「かわいい」というより「怖い」という気持ちがまさる。なにせ相手は口を結んで、こちらをちょっと小馬鹿にしたような冷ややかな視線を宿しているのみ。

似たような感想を抱いているものが例えば『ピーナッツ』。チャーリー・ブラウンよりも賢くて、痛烈な皮肉を言ってのける大人がどこにいるのか、いや、どこにもいない。

サン・テグジュペリもまた子供たちの慧敏(けいびん)さに畏敬の念を抱いていた人ではないかと思う。『星の王子さま』はもちろん、僕にとっては『人間の土地』に登場する二人の娘たち—何か宇宙的なあるものに関与していた—の印象がものすごく鮮烈だった。

このブログのプロフィール写真にいただいたビクトル・エリセ監督の映画「ミツバチのささやき」の主人公の少女アナの世界もまた、驚異的なるものがある。チヤホヤかわいがるのではなく、積極的に確信犯的に子供たちの姿をデフォルメして描ききるクリエイターには頭の下がる思いがする。

今回はずいぶん勝手に気ままに話が飛んで散らかったが、それぞれの子供たちが「ちょっとは似ている」ということで許されたい。