Weekend Note

2010年ブログ開設。日常、建築、旅行などについて書いています。

思いがけずSANAA

数日前の夕方、会社の部署内をたらい回しにされたSANAA妹島和世西沢立衛)の講演会の整理券が、開場まであと1時間くらいのタイミングで僕の手元に突然舞い込んで来た。整理券にとっても、ここのところデスクワークが続き気分転換を欲していた人に拾われて幸運である。同じく券を手に入れた同期の人と一緒に、すぐに会社をあがって会場に移動した。

西沢立衛さんは以前講演を聴いたことがあったが、妹島和世さんを生で見たのは初めてだった。勝手に体重35キロくらいしかないガリガリな女性を想像していたので、予想していたより一般的な体格という第一印象だった。講演は最近の8つのプロジェクトについて二人で適宜交代しながら説明していくというもの。妹島さんはプレゼンテーションが非常に上手い、特に省略の仕方が上手いんだと何かで読んだことがあったが、奇を衒うこともインテリめいた語彙を無駄に使うこともなく、簡潔で分かり易い話しぶりだった。

「環境と建築」という題目での講演で、特に妹島さんは講演の中で「その場所に合う」といった言葉をよく使っていたと思う。妹島さんは何気なく話しただけかもしれないが、「何がその場所に合っているか、人はけっこう感じれる」との言葉からは、自分の身体感覚への信頼をうかがえて感銘をうけた。今回紹介されたローザンヌ、瀬戸内海の島々、ランス等でのプロジェクトは、すべてが低層の建築だったので、高層になってきたときでも「その場所に合わせる」建築を期待したい。

しかしSANAAの建築についてはこんな風に聴いたり書いたりしてるばかりでなく、現地に見に行きたい。いや、「見に」行くというのは適切ではない気がする。彼女らの建築においては、常識的な意味での外「観」や内「観」はあまり本質的ではないという気もする。半年前に訪れたルーヴル・ランスの、特に「時のギャラリー」の空間体験もまだいまいち言語化できていない。でも、言葉が見つかったときは、それが、誰も知らない世界へ向かっていくSANAAに対する深い敬意を含んだものとなることは確かだ。