Weekend Note

2010年ブログ開設。日常、建築、旅行などについて書いています。

塩尻とえんぱーく


茅野市民館ほど有名ではないが、中央本線沿線の公共建築の傑作と思うのが、数年前にオープンした塩尻市市民交流センター「えんぱーく」。用途は図書館を中心に市民サロン、子育て支援センター、商工会議所、市役所分室、ギャラリー、民間オフィス、ショップ、歯科クリニックなど実に多様で、要するにシャッター商店街になりつつあるかつての中心市街地を、この建築を中心にもう一度活性化しようという取り組みのようだ。僕が訪れたのは4月にしては寒い曇りの日曜日だったが、館内の賑わいを見ると、この目標は着実に達成されてきている印象を受けた。

主に1,2階が図書館、3階はフロア全体が開放されたオープンスペース、更に上階にはオフィスなどが飛び出ているというのが基本的な構成だ。鋼板鉄筋コンクリート造という聞き慣れない構造形式で、206ミリという薄さの壁柱が97枚、平面の縦横ランダムに並べられて各階の床を支え、それと4つの大きな吹抜けで計画がまとめられている。この壁柱と吹抜けという明快な構成が、図書館や市民サロンの場所づくりを絶妙な不均質さでもって実現している。上手な設計のお手本のような建築だ。まさに構造システムの勝利。

壁柱で適度に区切られたオープンスペースが伸びやかにつながっていくから広い各フロアの隅々にまでまんべんなく子供、中高生、若者、おじさんおばさん、老人がおのおの居場所を見いだして利用している。この密度感はあまり見たことがない。建物の外周をガラス張りにしている以上の高度な開放性を感じさせる。

えんぱーくのホームページを見てみたら、丁度明日、3階多目的ホールで「お役所運営はもういらない〜これからの公共のあり方を考える〜」という実に似つかわしいタイトルのイベントがあるのらしい。ハードとソフトをハイレベルに融合されつづける建築としてこれからも注目していきたい。