Weekend Note

2010年ブログ開設。日常、建築、旅行などについて書いています。

いつも心にグルベンキアン

留学してとても良かったことのひとつは、ヨーロッパの色々なすばらしい場所を訪れて、日本や東京でもそれらに負けないような良い場所を発見していきたいという気持ちの張り、ある種のハングリーさが出てきたこと。

パレ・ロワイヤル、ビュット・ショーモン、ガララテーゼ、等々、基準になる場所は色々あるけれど、特によく思い出すのはリスボンのグルベンキアンだ。2時間程度居ただけだが、都市の真ん中のオアシスのような場所が、建築やランドスケープのデザインひとつひとつによって生み出されていることから受けた感銘は、今も自分の中で全く色褪せないのだった。

リスボンに暮らしたとしてグルベンキアンに通ったとして抱いたであろう想像上の愛着に匹敵してきたのが、都立大学駅の近くにある「めぐろ区民キャンパス」。都立大学の移転に伴って目黒区の施設に変わった場所で、キャンパスという上位概念が上手い具合に受け継がれたのか、体育館、ホール、斎場などなどが寄り集まって、住宅地において活動的で魅力的なパブリックプレイスになっている。この場所、当初は意識していなかったが、建物があって芝生があって、相当に大雑把な括りだけれど、どことなくグルベンキアンに似ている。

僕もここにある図書館を学生の頃から家の近所でもないのにわざわざ勉強や作業などで利用していた。1時間くらいで集中力が切れると気分転換に外に出る。ゆったりした広場や周囲の歩道を歩いて、トニ・クロースとドイツのワールドカップ制覇について、などの重要かつ高尚な問題についての思索を深めたりもした。「キャンパス」には地域の家族連れや勉強に励む中高生の姿もよく見かける。彼ら彼女らは自分とは何の関係もなく、特に話をするわけでもないのに、確かに僕のこの場所の印象をよりよきものにする手伝いをしてくれているのだから不思議だ。

めぐろ区民キャンパスは最初はたまたま見つけた場所だったのだが、後から調べてみると実はライバル会社の設計だったと知った。ちなみに、前回書いた「食と農」の博物館も、隈さんの設計だという事実はやはり後から知った。「誰が作ったか知らないけれどあの場所が好き」という感覚はとても豊かなものだと思う。グルベンキアンも、デザイナーの名前は思い出せない。