Weekend Note

2010年ブログ開設。日常、建築、旅行などについて書いています。

街全体が歴史的な作品

連休は青森県へ3泊4日の一人旅に行き、まじめに建築を見て回ってきた。仕事では建築のスケールよりもっと大きな土地の話などに関わる機会が多く、意識しておかなければどんどん建築の感覚が鈍ってしまうのではという危機感もあり。

まずは十和田市現代美術館へ。連休初日の土曜日、朝早く東京から新幹線で八戸まで、さらに地元のバスで小一時間、昼頃に十和田市の官庁街通りのバス停で下車。降りた所がいきなりシャッター街のアーケードだったので「寂しい場所に来てしまったか」と一瞬思ったが、アーケードと直行する官庁街通りは壮観だ。車道両側の歩道はゆったりとした幅で、松や桜の並木や水路が潤いを与えていて、歩車合わせて幅30メートルほどの堂々たる通りがまっすぐ伸びている。街割りは碁盤目状の街区で、官庁街通りの役所系の大きな建物が離れて建ち、広い敷地を備える大学のキャンパスのような広がりとおおらかさを感じさせる街並みだ。現代美術館の設計者の西沢立衛さんの言葉を借りれば、「街自体が歴史的な作品のような感じ」。人はまばらだが、さびれた印象は与えない。


十和田は官庁街通り全体を美術館と見立て、アートによる街づくりに取り組んでいるようで、通りにアート作品が点在していて愉しい。そして、通り沿い右側に白い箱状の建物がぽこぽこと並べられた格好の十和田市現代美術館があらわれる。シンボルのフラワーホースもおでむかえ。建物は道との段差やなく通りに面してガラス張りのラウンジや展示室が配置されていて、一応は入館料を払う「美術館」でありながら、ここまで開放的にできるのかと驚く。それぞれにアートの入った15個の展示室の箱を回廊で繋がれる構成で、ひとつずつアートを巡っていくのだが、どれもクオリティが高く、これまた愉しい。しかも屋外に街の風景が始終様々な角度・高さからばんばん見える新体験。街との連続感という点で、東京や都会のどの美術館よりも「都市的」と言えるかもと思った。

あとは企画展の一角で、自分はそれまで名前しか知らなかったスプツニ子!を知ることに(今までスプニツ子だと思ってた)。このボタンを押すとハローの声が出て、こっちのボタンを押すと、カラスの大群がやってきて、周りをけたたましく鳴きながら、旋回しはじめるのか。

アートの他、幕末に建設された人工河川の稲生川も少し散策。奥入瀬渓流十和田湖は時間がなかったのでまたの機会とし、名残り惜しくも十和田を後にし、青森市へ向かう。