Weekend Note

2010年ブログ開設。日常、建築、旅行などについて書いています。

チョコレート工場をたずねて

旧ムニエ・チョコレート工場といえば、19世紀にできた鉄骨構造の初期の建築として、建築史の教科書などによく載っている建物だ。パリから郊外鉄道RERで東に20分ほど行くと、ノワジエル駅に着く。チョコレート工場は駅から北に2キロほど歩いた川のほとりにある。

駅を降りるとまず、中低層の集合住宅群が広がっている。個々の建物以前のマスタープランがよかったのだろう。建物のデザインには多様性があって、地域全体としては統一感があるという、言うは易く行うは難きことが達成されている。いかにもモダニズム建築の面目躍如たる、明るくて健康的な住環境。芝生や並木も整っていた。

並木のやわらかい軸線に導かれて歩いていくと、かつてはお城があったらしい広い公園につきあたる。二番目の写真で、大きな地形としては緩やかな谷になっているのが伝わるかな?この公園を通り抜けていくと、マルヌ川のほとりのチョコレート工場にたどりつく。


この近代遺産だが、見学日でなかったので、敷地の柵の外から眺めるのみだった。すぐそばのマルヌ川からひいた運河の流れを動力として利用するため、建物は運河の中に設置された4本の石の柱脚(中に発電機を備える)に載っている。建築と土木とが組み合わさって、ささやかな風景をつくっているのがなんだか微笑ましかった。内藤廣の言う「建土築木(けんどちくぼく)」とは、たとえばこのようなものなのだろうか。

マルヌ川の風景も美しい。少年たちがカヌーの練習に精を出していた。