Weekend Note

2010年ブログ開設。日常、建築、旅行などについて書いています。

09. Oh, Sentimental Sweden

コペンハーゲンスウェーデンのマルメを結ぶオーレスン・リンク(橋および海底トンネル)が2000年に開通し、列車と自動車での行き来が可能となって以来、両都市はより身近となったという。僕も旅の後半の日、コペンハーゲンでの最後の宿となる市街地のホテルにチェックインした後、その足で中央駅まで歩き、正午過ぎにマルメへの列車に乗った。マルメにはあっという間に着いた。東京から千葉に行くくらいの感覚か。特に橋を渡っている時間はわずかだった。

天気は曇ってきたが、マルメは運河が通り、古い街並みの残る美しい都市だ。適当な店に入って昼食をとり、マルメ市立図書館に向かう。図書館はお城の公園の緑に面していて、20世紀はじめに建てられた既存部と、20世紀末に加えられた増築部からなる。増築部は、コペンハーゲンのオペラハウスやIT大学を手がけた巨匠建築家のヘニング・ラーセンの設計。ガラスの大きなアトリウムが明るく開放的で気持ちいい、正統派の公共建築だ。

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図書館からの帰り道は、スウェーデンに来ているということで、アヴィーチーを聴きながら歩いた。今年4月の急死は大きなショックだったので、追悼の意をこめて。ところが、3曲くらい聴いているうちにどんどん空模様が怪しくなり、大気は湿気を含み、目に留まった建物に少し入っている間に土砂降りになった。こういう演出は望んでいないのだが…。そんなことを考えていると、思い出してきた。2011年の夏にスウェーデンに来たときも、留学の最終盤でやや感傷的な気分にとらえられていて、しかも白夜でいつまでも暗くならないものだから頑張って街を歩き回り、体力的にも精神的にもグロッキーになったことを。これ以上おセンチな気分をスウェーデンと結びつけるのはよくなかろうと考え、小さな折りたたみ傘を頼りに駅まで逃げるように駆け戻り、すぐにコペンハーゲンへ帰る列車に乗りこんだ。

というわけでわずか3時間のスウェーデン滞在だったが、他国への日帰りはヨーロッパに来ているという実感を強めてくれる。特にコペンハーゲンとマルメは本当に近い。帰りの列車では、『バッハの旋律を夜に聴いたせいです』を集中して聴いていたせいで、デンマーク側に上陸したことに気付かなかったほど。なお、コペンハーゲン中央駅に着いた頃には、空にはまた晴れ間が広がっていた。