Weekend Note

2010年ブログ開設。日常、建築、旅行などについて書いています。

鹿島アントラーズ観戦記(その2)

評判に聞いていた通り、カシマサッカースタジアムの雰囲気は素晴らしい。サッカー専用スタジアムのため陸上のトラックがなくピッチと観客席の距離が近いし、4万人ほど収容の規模感は大きすぎず小さすぎず、ちょうどいい。転売ヤーがまとめ買いしたチケットを売り切れなかったのか、上段に空席が目立つのは残念だが、ゴール裏の赤一色に染まったサポーター席は美しい細密画のようでもあり、声援も規律正しく整っている。午後も遅い時間にさしかかってきて空にはうろこ雲が西日を受けて橙色にちらちらと浮かび、ゴール裏席とメインスタンド席の間の角部からは外に視界が抜けて丘の緑が見える。反対側の席からは、海側の景色が見えるのだろうか。

試合が始まると、立ち上がりはペルセポリスが攻勢をかけていたが、鹿島は耐え、徐々に盛り返してゆく。キャプテンで日本代表の昌子は味方によく指示を出してディフェンスを締め、前線の鈴木優磨あたりも身体を張って攻撃のリズムを少しずつ作っている。前半をスコアレスで折り返すと、後半は鹿島が主導権をにぎり、厚みのある攻撃から2点を挙げる。終盤は苛立ちをつのらせる相手を尻目にのらりくらりと時間を使い、2対0の快勝。第2戦のアウェーの戦いが残っているのでまだまだ油断はできないが、優勝に向けて大きなアドバンテージを得た。サッカー観戦で応援していたチームがこれほど充実した内容で勝つのは自分にとってほとんど初めてだ。試合終了後、コンコースのトイレで用を足していると、スピーカーから昌子のインタビューが聞こえてきた。「今日の応援じゃまだまだ足りない」とサポーターを煽っている。その前向きな声音からのサポーターのさらなる盛り上がりを想像すると心が温まった。

Jリーグが発足してはや四半世紀、トータルの実績や安定感から言って、鹿島アントラーズは誰もが認める名門クラブだ。今回の観戦は、言葉で上手く表現できないが、そんなクラブの格の高さを感じた経験だった。大一番でのこの試合内容は出来過ぎだったし、ひょっとすると第2戦で逆転されるかもしれないが、それでも鹿島が日本のクラブであることを誇らしく感じたのだった。これは、昨年のアジアチャンピオンズリーグ優勝を生で見た浦和レッズに対しては、申し訳ないが、抱かなかった類の感情だ。たとえば、浦和サポーターの応援やブーイングが敵チームを苛めるための度が過ぎたおこないに聞こえてしまうのに対して、鹿島サポーターのそれは、シンプルにアントラーズの選手たちを後押しするもののように聞こえた(僕の先入観が多分に入っているが)。

帰りの移動の方が来るときよりもスムーズだった。渋滞する車のテールライトの赤い光が数珠繋ぎにつらなる国道沿いをウィンドブレーカーを羽織って30分ほど鹿島神宮駅まで歩き、ローカル線に乗って佐原へ。次いで乗り換えて成田へ。夜の参道は多くの店がシャッターをおろしていてひっそりしていたが、まだ開いていた鰻屋で鰻丼をいただく。成田からもひとつひとつ電車を乗り継いで、夜の10時頃に帰宅した。